令和3年度継続研修会での質問と応答の記録

 本年度は、参加者の皆さんからの質問と応答を参加者の皆さんと共有し、より臨床動作法についての知識と体験を深めていきたいと考えております。応答を見て、更に質問を重ねていただいて結構です。

 このページのコンテンツは関西臨床動作学研究会会員と継続研修会参加者を対象としておりますので、ご配慮ください。

第5回 9月25日(土) 質問と応答

【質問】

① 次回は、対面とオンラインのハイブリットになるのでしょうか?愛知は緊急事態宣言が解除されるようです。私もワクチン接種を2回終えました。気持ち的に少しほっとしながら県外に行けそうかなと期待しています。

⇒ 10月は対面参加とオンライン参加のハイブリッド研修となります。

② 宮脇先生がおっしゃっていた動作法における「努力」のお話を興味深く聴かせて頂いていました。援助者だけでなく、他者や対象、環境との相互性という視点から、「努力」以外のどのような表現がありそうでしょうか? 動作法は日本で生まれた技法ですので、やはり東洋の思想と切り離しては考えられないように思います。主体が対象に働きかけるような「努力」とは違い、相互作用の場で生まれる磁力のようなものがあると考えてみるのはどうでしょうか? 動作法の「意図」のところで感じるのは、意図の主体の複数性です。精神分析のいわゆる第2局所論では複数の主体はエス、自我、超自我となるかもしれませんが、他者や環境との相互性からその人の中に生まれる「意図」もあるのではないでしょうか。 もちろん、臨床動作法を行う場合は、動作課題を設定することで、意図して課題を行う主体は限定されますが、それでも援助者との相互作用の中で生まれる「意図」も「努力」もあるようにも思います。しかし、だからと言って「やらされている」というものとは全く違って、むしろ相互作法の中から自分の「意図」や「努力」として育まれてくるような、そういう「意図」や「努力」を拾い上げていくような援助の仕方(関わり方)を、今日の宮脇先生の実技映像を拝見しながら感じていました。ありがとうございました。

⇒ 成瀬先生は「努力」を”effort”ではなく、”strive”とお話しされていたことがあります。その定義は” make great efforts to achieve or obtain something.”とあり、そこから推察いただければと思います。「努力」ということばを用語として定義されています。

 思考の背景にはその人の「文化」があるため地域や時代等の環境との相互作用があるかも知れませんね。

③ 肩上げ、肩開きは、いままで椅子坐位で行ってきましたが、立位やあぐら坐位で行う意義や注意点はありますでしょうか?(椅子坐位が、リラックス出来てやりやすい?)

⇒ 肩上げ、肩開き課題を立位で行う場合、その姿勢を維持するために必要な努力は椅子坐位と比較してどうでしょうか?より多くの注意を向けなければなりません。動作法の研修会では、胡座坐位でおこなってきました。それは、軸を立てることで、安定した姿勢を保て、肩上げや肩開き課題にちゅういをむけることができるからです。それぞれの姿勢(立位、椅子坐位、胡座坐位)で行う意義は、課題達成に向けてクライアントの向き合う心理的姿勢にあるかもしれません。注意点は、その姿勢で軸感を持って課題に取り組めるように明確に援助(ことば掛けによる援助、方向性や速度、緊張の度合いを手による援助)を行うことではないでしょうか?

 

 

第4回 8月21日(土) 質問と応答

① 質問にできないのですが、臨床動作法における「意図」は、一般的な「意図」と異なるということは理解できるのですが、臨床動作法における意図が、「心的現象」というという点がまだよくつかめきれない感じがします。頭では分かった気がするのですが、実際にそれを見ていくことはまだできないと思います。

⇒ 「心的現象」と「物的現象」という表現を具体的に生物と生命活動を伴わない物体とを比較してイメージすることで理解が進めばと考えます。

② 「動作法で得られる7つの体験」と「動作法体験(具体的側面)」「伴う体験(抽象的側面)」の関係はどうなるでしょうか7つは2種類に分けられるのでしょうか?

⇒ ③への回答

③ 「動作法で得られる7つの体験」7つの体験区分それぞれに「動作体験」と「伴う体験」の両方が含まれると捉えれば宜しいのでしょうか?それとも、①~③が動作体験、④~⑦が「伴う体験」でしょうか?

⇒ ね①~③は動作体験が「目指す動作をすることに直接関連する動作体験(体験の具体的側面)として考えられます。④~⑦は「動作体験」がありそれに伴い、生起する「社会的・物理的な内外環境に対する感じや自分自身についての感じなど」として考えます。

④  臨床動作士の試験の過去問のようなものはあるのでしょうか?「ここは試験でよく訊かれるところ」というコメントを大石先生がされているので、どういう試験なのかと興味を持ちました。

⇒ 認定動作士・臨床動作士に関する認定については、「臨床動作法 資格申請関連細則集」が日本臨床動作学会のWebページ、資格認定のタブからPDFファイルを開くことで確認することができますので、ご確認ください。

 資格試験は、Covid-19感染拡大の影響で、2020・2021年度は見送られています。

資格申請に当たっては、1)基礎資格(動作学会会員・専門領域の学科卒業か学識を有すること・対人援助の専門家としての実績<臨床動作士>)、2)研修実績(理論・技法実習・ケース研究)、研修会参加(学会主催研修会上級、認定研修会等)、3)ケース報告、4)日本臨床動作学会学術大会への直近5年間に2回以上参加、5)認定講師2名の推薦が必要条件とされ、十分条件として「臨床動作学の人間理解に基づいて、対象者のより豊かで健康な生活に寄与しうる臨床動作法の適用、即ち見立てと運用を独立してなし得る」知識と理論および技能を持つこととされています。また、資格取得後は、倫理規定遵守の誓約書が必要となります。また、5年間の有効期限内に更新要件を満たし、5年ごとの更新申請が必要となります。

2019年度までの審査内容は、書類審査1)~5)と面接によって行われています。具体的には、面接では、実技審査(動作課題を試験官<認定講師>に行い、その支援の手、声かけ等)と口頭試問(臨床動作法に関する基本的知識と実技審査についての見立て等)

 

第3回 7月17日(土) 質問と応答

① 「緊張」と「弛緩」が同時に起きるというのは理解できるのですが、その状態を見極めることがまだよくわかりません。みるときにポイントはありますか。

⇒スポーツの競技会などでゾーンに入っている場面は記録動画やTV等ではあるかと思いますが、現実に目の前で見る機会はなかなかありません。一心不乱である状態ながら、滑らか且つ正確な動きがその競技の山場で起こっているようです。

② 講義では2点ほど。①「単相的対処法」との表記がありましたが、「単相的ということばに馴染みがありません。比較的ポピュラーな使い方でしょうか? ②静的な緊張≒「固定した姿勢」≒性格傾向のような関係はあるでしょうか?

⇒「単相的」というのは私の表現です。ターゲットが絞られており、それらが解決することで完了するという意味合いで使いました。

相関関係はあるかと思いますが、ニアリイコール(≒)を使うことは難しいように考えております。

③ 成瀬先生の「主体」の定義は、生体としての環境適応活動の総体の中から芽生え、それらの活動を代表するもの、だったと思います。主体の努力と言うと、そもそも生体としての活動が適応努力なのではないかと思うのですが、「主体の努力活動」と言うときの「主体」は、その主体とは違う主体ということでしょうか?

⇒「主体」は広義では同じ主体であると考えます。努力にも生来からのものと、意図して意識的主導的に行う努力も主体は同じですが、「努力」をどのように切り取るかで、異なっているように見えるのかも知れません。

④ 立位の踏み分け、踏みしめ、立位前傾課題を選ぶときは、どのような時が多いですか?また、流れで、3点曲げ、上半身を扱っていくなど次の課題に展開していくことがあるかと思いますが、クライエントの状態に応じて課題が選択されていく感じでしょうか?体験では、渡邊先生が三点曲げ?を入れたように思いましたが選択したのは、どのようなところからになるでしょうか?

⇒原則的に対処法として動作課題が決まっているわけではありません。強いていうならば、過緊張や不当緊張で主体活動としての課題の遂行が難しい場合には、リラクセーション課題で「自由に動かせる感じ」を体験してもらい、次に今ここに自分がいるという「自己確実感」を感じられるように、「タテ直」を感じ、充分に重力に立ち向かう(抗する)体験してもらうために立位課題に取り組んでもらうという大枠は考えられるかと思います。腕上げに代表されるコントロール課題でリラックスしながらも集中力を持てる体験なども検討できるかと考えています。クライアントを見立て、クライアントの状況を見立てていく中で仮説を立て、課題遂行を援助する中で検証し、その過程で課題が選択されるのであれば、良いと考えます。渡邉先生が今回の立位の中で三点曲げを選ばれた理由はおそらく、立位課題をじっくり味わうことためにはクライエントロールの方の足首、膝、股関節の硬さを自身で弛める体験が必要と考えられたのではないでしょうか?

 

第2回 6月19日(土) 質問と応答

① 一人動作法は、時間や回数など、どのあたりを目安にされているのでしょうか。

⇒ご自身一人でされる場合は、一課題を3~5分を1~3セットぐらいから始め、身体の状態や気持ちで時間や回数は変わってくると考えております。動作セッションは、1セッションのセラピーの場合、10~40分程度ですので、疲れが過度に残らないように目安を持たれてはいかがでしょうか。

② Hさんが、いろんな動作法を体験されて、両方体験されたから、気づいたこと感じられたことがあったら、教えていただきたいです。

⇒7月の研修会の折に時間を設けて皆さんにお伝えできるように設定します。

③ 一人動作法と一対一の動作法があるということですが、オンラインでも臨床動作法を実施されることはあるのでしょうか。今日の実習をやってみて、相手の様子を見て声かけをするということは、オンラインでは限定される部分があるのかなと思いました。

⇒オンライン動作法としてセラピーに正式に用いられるように今まさに始まっているところです。電話相談で落ち着いて現実に向かえるようにと課題を提示し、援助し、その電話中に冷静に現実を見直すことが出来たことがあります。その際、こちらが得られるのは、声の質や息づかいなど限定されているのですが、そこから得られるものから見立て、仮説形成し、課題提示、動作援助、を組み立てていくことが大切だと考えています。出来ることに焦点を当ててクライエントに有効な手立てで援助することが大切ですね。

④ リハビリテーション学会について、インターネットで調べてみたところ、リハビリテイション心理学会とリハビリテーション医学会というのがありました。リハビリテーション学会が見つけられなかったのですが、私の探し方がうまくないのかなと思います、教えていただけると幸いです。お尋ねした理由は、理学療法や作業療法との棲み分けなどあるのでしょうか。リハビリテーションと聞くと、素人的発想ですが、理学療法や作業療法が思い浮かびました。

⇒講義でお示ししましたのは「日本心理リハビリテイション学会」と「日本心理リハビリテイションの会」です。ご確認ください。また、動作訓練と理学療法に関しては、指導要領の改訂(1971年)で、機能訓練から養護・訓練への移行は、肢体不自由教育において大きな転換点で1973(昭和48)年には雑誌『肢体不自由教育』において、養護・訓練のあり方について整肢療護園長(当時)で整形外科医の小池文英(1913-1983)と、九州大学教育学部教授の成瀬悟策(1924-2019)が議論を行ったいわゆる「成瀬・小池論争」がありました。

⑤ そこで質問としては、Thがclに対して客観的判断をする為にどのような所までを見立てれば良しとするのか。例えば、ベテランと新人が同じ介入の動きは、難しいようにベテランの人は、どんな所を注目しているのか?上達へのコツのような物が有れば、姿勢ならclの構えがどうなれば良いのか?動作課題中は、どこを注目しているのか?など

⇒観察と「見立て」について、第7回の講義で準備をしております。

どのようなところまで見立てればよしとするかにとらわれることなく、クライアントの様々な変化(具体的には、表情や課題部位の緊張と弛緩など、気のつく限りの情報)、それが、どのように動作に関係していると捉えるかについて、研修や実践の中で体験を深めてもらうことが大切だと考えています。課題動作による緊張や弛緩の状態、それに伴う緊張や弛緩などに注目することが大切です。

⑥ 「身体運動」には「動き」だけでなく「緊張」も含むというご説明でしたが、「随伴緊張」は、「努力」から生じるので「身体運動」だと理解しますが「慢性緊張」は「努力」の前から存在すると思いますが、これも「身体運動」に含まれるのでしょうか?

⇒大前提としての「臨床動作法でいう動作とは目に見えるからだの動きそのものではなく、からだを動かそうとするときの動作努力の全プロセスを指す。」という鶴先生のお考えから含まれると考えるのが妥当かと思われますが、晩年、成瀬先生が、身体運動ということばではなく、動きや緊張ということばを使われていたことを理解することが出来ます。慢性緊張は、不適切と思われる努力の結果の状態でもあり、「努力の前から存在すると思います」のその努力とは違う努力が意図する、しないにかかわらずなされたため不当緊張が続き、慢性緊張となったと考えています。

 

第1回 5月15日(土) 質問と応答

① 本日の講習のレジュメは配布されないのでしょうか

 →受講アンケート送信完了者へ添付返信して資料送付しています。

② 「心理療法として用いる場合・・・動作療法」とあります。心理療法として用いない場合でも、心理課程に焦点をあてて、心理療法的アプローチによるところが共通(底通)と理解して良いでしょうか?"

 →質問の意図を要確認(6月会場で回答)

③ "実技の肩開きを見て感じたのですが課題に対して不適切な動きをした場合その都度指摘するのがいいのか、一回課題を終えてから伝えて2回目に行くのが良いのか課題に対して構えが変化した時の適切な関わり方を教えてほしいです。"

→後からでは、「いま、ここで」の実感とは異なりますので、その時に伝えたいですね。しかしながら、ご自身が「違う」と指摘され続ければ、意欲もなくなりませんか? そこで、出来ているところを「そう、そう」と声かけしていきます。不適切な努力があった場合は、「出来ていません.」と伝えるのではなく、「こうしてみましょうか?」など提案するような声かけであれば、努力を続けられるのではないでしょうか。

④ 肩開き課題で、ずっと同じように掌を体に付け、ずっと保持して支持するのが難しいのですが、支援者の握力や、肘、手首の返しのほか何等か注意する点があれば教えてください。

 → 手を添える援助は援助者が無理のない姿勢で行わないと「保持するのが難しい」と感じられるかも知れませんね。この部分を研修で培って行けるようお手伝いさせていただきます。援助者側の姿勢をどのように作っていくかというところ、援助が被援助者にどのように届いているかをモニタリングしながら適切な援助に修正していくことを注意していきたいですね。